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Bröderna Lejonhjärta はるかな国の兄弟

スウェーデン映画 (1977)

『長くつ下のピッピ』、『やかまし村の子どもたち』、『ちいさいロッタちゃん』、『エーミル』のシリーズなど数多くの児童文学で知られ、このサイトで紹介予定の映画でも、『Emil i Lönneberga』(1971)、『Nya hyss av Emil i Lönneberga』(1972)、『Emil och griseknoen』(1973)、『ラスムスくんの幸せをさがして』(1981)、『ミオとミラミス』(1987)、『ロッタちゃん/はじめてのおつかい』(1991)と多数の映画の原作者となっているアストリッド・リンドグレーン(Astrid Lindgren)の1973の作品『Bröderna Lejonhjärta』(1973)の映画化。原題は、『レイヨンヤッタ兄弟』。邦題には、翻訳本の題名を使用した。主人公は9歳のスコールパンことカールと13歳のヨナタン〔訳本ではスコールパンではなくクッキーになっている。スコールパン(Skorpan)はヨナタンの好きなお菓子ラスク(skorpor)をもじったもの。1976年の翻訳時点ではラスクは日本に馴染みが薄かったので、似たようなクッキーにしたのだろう〕。児童文学なのに、物語は2人が死ぬところから始まる。そして、2人が行った先は宇宙の果てにある地ナンギヨーラのチェリーの谷(シェスパシュトーレン)。そこにある、もう一つの野バラの谷(トールストーレン)は、悪の領主テンギルによって蹂躙されていた。「死んだ」という前提さえなければ、ごく普通の「中世ファンタジー」だ。死んだ先の地でも 人は死ぬ。だから、レイヨンヤッタ兄弟は天国に行った訳ではない。そして、兄弟は物語の最後に再び死に、ナンギリーマへと移る。こちらは、ひょっとしたら天国なのかもしれない。映画は、アストリッド・リンドグレーンにとっても異色の設定の原作を、ほぼ忠実に映画化している。唯一の大きな違いは、2人の年齢。兄は13歳から20歳へと大幅に変更されている。だから、『ミオとミラミス』のように2人の少年の冒険譚ではなく、大人と子供になってしまっている。メリットは、視点はスコールパンにあるのに、実際に活躍して世界を救うのは英雄ヨナタンという構図が、よりすんなりと受け入れられる点。なお、スウェーデン南部の町ヴィンメルビュー(Vimmerby)には、アストリッド・リンドグレーンの世界(Astrid Lindgrens värld)というテーマパークがある(1981年開園)。そこでの目玉は、2016年6月に新装なった『レイヨンヤッタ兄弟』のエリア(http://astridlindgrensvarld.se/parken/kliv-rakt-in-i-berattelserna/broderna-lejonhjarta/)。左記の公式サイトで、そこで演じられている劇の様子がよく分かる。兄弟は、映画と同じ大人と子供だ。

肺結核で死期の迫ったスコールパン。兄ヨナタンは、弟を慰めようと、死んだら お伽噺話の世界ナンギヨーラに行けるんだと教える。しかし、そう言っていた兄が、火に包まれた家から弟を助けようとして背負って飛び降り、弟より先に死んでしまう。そして、その2ヶ月後、スコールパンが死んで目覚めると、そこは、兄の話の通り、チェリーの花が咲き乱れる美しい谷だった。そして、兄との嬉しい再会。生前にはできなかった泳ぎも乗馬もそこでは自由にできる。しかし、お伽噺話の世界だったはずのナンギヨーラには、怒りと憎しみ、そして死もあった。チェリーの谷の隣の野バラの谷は、僭主テンギルに占領され、町の人々は搾取されていた。チェリーの谷には裏切り者もいて、そのお陰で、解放運動の指導者オルヴァールも、カトラ洞窟に監禁されてしまう。兄ヨナタンは、オルヴァールを救うため野バラの谷に潜入するが、行方不明になる。夢の中で兄の「助けて」という声を聞いたスコールパンは、単身 野バラの谷に向かう。途中で裏切り者が誰かは分かるが、逆にテンギルの兵士に捕まってしまう。スコールパンは、野バラの谷の住民だと嘘を付き、町に連れて来られた際、運よく、嘘で話したのと同じような老人に出会い、救いを求める。その老人マティーヤスは、抵抗運動の支援者で、ヨナタンを匿っていた。そのヨナタンは、家の地下からトンネルを掘り、町を囲む市壁の外に出ることを目指していた。トンネルが完成すると、ヨナタンは、テンギル兵になりすまし、スコールパンが裏切り者から聞いた合言葉で町を出る。一方のスコールパンはトンネルから町を抜け出す。合流した2人は無事オルヴァールを救出する。そして、オルヴァールの指揮する反乱軍とテンギルとの決戦。そこには、テンギルの意のままに動く「火を吐く竜」カトラも参戦するが、反乱軍の奮闘とヨナタンの勇気で、最後は勝利を収める。洞窟に逃げたカトラを葬るため、ヨナタンとスコールパンは洞窟に入り、カトラを殺すことはできたが、ヨナタンはカトラの炎を浴びる。死を目前にしたヨナタンは、死ねば、ナンギリーマに行けるとスコールパンに話す。それを聞いたスコールパンは、兄と一緒に崖から飛び降りてナンギリーマに行くことを決意する。

スコールパンを演じるのはラース・サーデダール(Lars Söderdahl)。1964年7月26日生まれで、1977年9月のプレミアなので、撮影時11~12歳になる計算だが、映画ではもっと幼く見える(原作の9歳に近い感じ)。主な出演作は、この作品のみ。


あらすじ

セピア色の映像をバックにカールの独白が流れる。「これから、お兄ちゃんについて話すよ。名前は、ヨナタン・レイヨンヤッタ」。ヨナタンが歩いているのは、1920年代の町。初期のフォードと馬車が混在している。「おとぎ話に聞こえるけど、全部ホントなんだ。だけど、知ってるのは、僕とヨナタンだけ」。さらに、「僕の名前はカール。だけど ヨナタンはスコールパンって呼ぶ。スコールポル(お菓子のラスク)が大好きだから、だって」。9歳のカールが窓から町を眺めている。「話は、僕がもうすぐ死ぬって知っちゃった日から始まるんだ。ママが服を作ってるおばさんの一人が、そう言ってた」〔原作によれば、結核で数ヶ月の命〕。スコールパンはソファに横になる(1枚目の写真)。そこに兄がやってくる。「どうした、スコールパン。悲しそうだな」。「ヨナタン、僕、死んじゃうって知ってた?」。「知ってたよ」。「そんなひどいことって、あり? 10歳になる前に 死ななくちゃいけないなんて」。「なあ、スコールパン、そんなにひどいことじゃない」。「最悪じゃないか。土の中に埋められるんだよ」。「体はそうかもしれない。だけど、心はもっと別の、遠く離れた所に飛んで行くんだ」。「どこへ?」。「ナンギヨーラ(Nangijala)。星のかなたのどこかにある… かがり火と お伽噺話の世界だ」(2枚目の写真)。「ナンギヨーラじゃ、お前は、もっと強く健康になれる」。スコールパンが、ひどい咳をする。兄は、「お前は、いつかきっと、ナンギヨーラから会いに来るに違いない。その時は、雪のように白い鳩の姿になってるだろう」と言って慰める。夜になり、兄が、水を持ってきた時、スコールパンは、不安をぶちまける。「ヨナタン、怖いよ。ナンギヨーラには行きたくない。お兄ちゃんと一緒にいたい」。「後になれば、一緒になれるじゃないか」(3枚目の写真)。「『後』って? お兄ちゃんはきっと90まで生きるから、僕、ずっと待ってなくちゃいけない」。兄は、90まで生きても、スコールパンにはたった2日に感じられるから、それまで遊んでいればいいと慰める。
  
  
  

しかし、事態は一気に逆転する。ある日、スコールパンの家が火事になり、兄は弟を救おうと、火の中に飛び込んでいく。そして、2階の窓から、弟を背負って飛び降りる(1枚目の写真)。弟を背負っていたので衝撃が大きく、兄は死にスコールパンは助かる。映画は、ヨナタンの埋葬を遠くから映す。スコールパンは病が重くて葬儀には出られない。スコールパンは心配する。「僕は怖かった。もし、ナンギヨーラが存在しなかったら? みんなヨナタンの作り話だったら?」。そんな時、窓辺に1羽の「雪のように」白い鳩が現れる。それを見たスコールパンは、「ホントなんだ」と安心する(2枚目の写真、矢印)。「僕が行く時、湖の端にいてくれる? 僕、もう怖くなんかない」。鳩は飛んでいく。「ナンギヨーラによろしくね! 僕もすぐ行くから!」。そして、激しい咳。スコールパンはやっとの思いでベッドに横になると、静かに息を引き取る(3枚目の写真)〔原作では、兄の死の2ヶ月後〕
  
  
  

スコールパンは、チェリーの白い花が満開になった木の下に倒れている(1枚目の写真)。着ているものはパジャマのままだ。チェリーの谷(Körsbärsdalen)なので、チェリーの花が咲き乱れている。目を覚ましたスコールパンは、草の手触りを感じ、白い花を見上げる。そして立ち上がると、チェリーの林の中を歩いて行く。すると、湖の岸で釣をしているヨナタンが見える。約束通りだ。スコールパンは、大声で、「ヨナタン!」と叫ぶ。それに気付いたヨナタンが立ち上がる。2人は、湖の岸で抱き合う(2枚目の写真)。あまりに喜んだので2人とも湖に落ちてしまう。病気が重く、泳いだことなどなかったスコールパンだが、ナンギヨーラでは平気で泳げる。2人は湖畔で服を乾かすが、気候が温暖なので裸でも寒くない。服を着た2人が向かったのは、お伽噺に出てくるようなワラ葺き、白壁の可愛らしいコテージ(3枚目の写真、矢印はスコールパン)。
  
  
  

コテージには2頭の馬も用意されていた。白のグリムと黒のフィヨーラ。スコールパンの馬は黒のフィヨーラだ(1枚目の写真)。そして、さっき泳げたように、馬にも自由に乗れる。2人は、林を抜け、野原をよぎり、花に囲まれたソフィーヤおばさんの家に行く。「弟さん、着いたのね」。そして、「今夜、金の雄鶏亭にいらっしゃい。カールも一緒に」と誘う。コテージに戻ったスコールパンは、用意されていた服を着る。ヨーロッパ中世の狩人を思わせるサーモンピンクの服で、ヨナタンの濃灰紺といいペアだ。「すごいや、カッコいい。お兄ちゃんは王子様みたいだ」。スコールパンは弓も習うが、こちらは何故か、水泳や乗馬と違って全然ダメ。暗くなり、金の雄鶏亭に向かう途中で、ヨナタンは、スコールパンの家族名がレイヨンヤッタ(Lejonhjäta)、英語で言えば、“Lionheart(勇敢な心)” であることを思い出させる。そして、村人に紹介する際、スコールパンだとバカにされるかもしれないので、正式に「カール」と呼ぶと告げる。「宿屋なんて入ったことないよ」。「心配するな。いい連中ばかりだ」。宿の亭主のヨッシが、スコールパンを見て、「これでレイヨンヤッタ兄弟が揃ったか」と笑顔で言い、イスの上に乗せる。兄は、中にいる全員に、「これは弟の、カール・レイヨンヤッタ。今、着きました」と紹介する(2枚目の写真)。「みなさんは、私にしてくれたように、この子にもよくしてやって下さい」。ヨッシが代表して歓迎の言葉を述べ、スコールパンはヨッシのことがすっかり気に入る。そのままソフィーヤの隣に座ったヨナタンに、彼女は、「明日の朝、知らせが届くわ。あなたも来る?」と、ひそひそ声で話す。2ヶ月前に着いたばかりなのに、ヨナタンはかなり信用されている。「ヒューベルトに話しましたか?」と訊くと、「しーっ」と制止される。ヒューベルトは、何となく意地の悪そうな人間。その時、ソフィーヤから、「カール、馬は気に入った?」と訊かれ、スコールパンは、「あんな素敵な馬 見たことない」と笑顔を見せる(3枚目の写真)。
  
  
  

コテージに戻ったスコールパンは、兄に、ソフィーヤがどんな人か尋ねる(1枚目の写真)。兄の返事は、「鳩の女王(Duvdrottningen)」(2枚目の写真)。野バラの谷(Törnrosdalen)を支配するテンギルの軍団と戦うためには、情報の伝達が重要で、それには伝書鳩しかない。その伝書鳩を大量に飼育・管理しているのがソフィーヤ。その意味では、作戦の司令塔でもある重要な存在。ヨナタンはソフィーヤの庭を任されているが、腹心の部下のような役目も担っている。スコールパンは、さらに、「僕に会いに来た時には、ソフィーヤの鳩だったの?」と訊く。「そうだ。ソフィーヤの鳩だけが、どんな遠くにも飛んで行ける。野バラの谷にも入り込める。いいかい、ナンギヨーラは2つの緑の谷に分かれている。ここがチェリーの谷。山の向こうには野バラの谷がある。テンギルの軍団は谷に侵略し、人々を奴隷にした。ソフィーヤの鳩は、山を越えて その人たちと連絡を取ってるんだ」。2人は、ソフィーヤの家に向かう。途中で、狩人のヒューベルトと出会う。ソフィーヤの家に着くと、彼女は悲しそうな顔をしている。理由を訊くと、「ヴィオランタが矢で撃ち落され、手紙が消えていた」。「チェリーの谷に裏切り者がいるんだ」。その時、別の鳩が飛んで来る。伝言の内容は最悪だった。「オルヴァールが昨日捕まり、カトラ洞窟に閉じ込められた。チェリーの谷の誰かが居所を漏らした。裏切り者を捜せ」。混乱した顔で聞いていたスコールパンを見て、ソフィーヤは、兄に「説明してあげなさい。この子も知っておかないと」と言う(3枚目の写真)。兄は、帰り道に、「オルヴァールがいないと、野バラの谷に自由は戻らない。彼は、テンギルに対する抵抗の指導者なんだ。だけど、捕まって、テンギルの領地にあるカトラ洞窟に送られてしまった」と教える。
  
  
  

夜になり、スコールパンは寝ていた兄を起こし、「チェリーの谷のみんなも,このこと知ってるの?」と尋ねる(1枚目の写真)。「このことって?」。「ソフィーヤの鳩とか、秘密の連絡とか」。「いいや、信頼できる者だけだ。だけど、裏切り者はその中にいるんだ」。翌日、湖畔で、兄は意外なことを告げる。「スコールパン、しばらくここに一人でいてくれ。私は野バラの谷に行かないと」。スコールパンは、「何言い出すんだよ!」と、兄から離れると、「ひどいじゃないか!」と怒鳴って走り去る。兄が追いかける。「お兄ちゃんがタンギルに捕まりに行くんなら、僕もついてく!」(2枚目の写真)「待ってるなんて嫌だ! 戻ってこないかもしれない!」。彼は、二度と兄と別れたくないのだ。コテージに戻ったスコールパンは、「どうして危険なことをしなくちゃいけないの?」と尋ねる。「たとえ危険でも、すべきことはあるんだ」。「どうして?」。「やらないと、人間じゃなくなって、ただの土くれになる〔Ännars är man ingen människa utan bara en liten lort〕」(3枚目の写真)。この「土くれ」という言葉は、後で何度も使われる象徴的な言葉だ。こうして、兄ヨナタンは、1人で極秘の旅に出発する。「ちゃんと戻ってきてね」。「もちろんさ。約束する」。兄がいなくなってから数日後。スコールパンが1人で馬に乗っていると、ソフィーヤの鳩が飛んでいくのが見えた。それからしばらくして、ヒューベルトが弓で何かを狙っている。スコールパンは、もしかして鳩を狙ってるのかと思って、「撃たないで」と呼びかける。「こんな遠くまで来て、何してる?」。「遠乗りだよ」。スコールパンはコテージに戻り、しばらく考えると、ソフィーヤの家に行く。そして、「ヒューベルトが裏切り者だ」と言う。「そんなこと、あり得ない」。「でも、鳩を射ようとしてたよ」。「ヒューベルトじゃないわ。彼は、自由のために戦ってるの、私たちみたいに」。スコールパンの告発は、一笑に付されるというよりは、狼少年的に受け取られてしまう。
  
  
  

夜、寝ていたスコールパンは悪夢にうなされる。そして、兄が。「助けて〔Hjälp〕!」と叫ぶ。スコールパンは飛び起きる(1枚目の写真)。彼は、心配でいたたまれない。「ヨナタン、今、行くからね」。ベッドから出たスコールパンは、衣装箱の前に立つ。横の壁には、ヨナタンとスコールパンの乗馬姿が描かれている(2枚目の写真)。スコールパンは、「やるぞ。僕は『土くれ』じゃない」と言うと、衣装箱から服を取り出す。次のシーンでは、スコールパンがフィヨーラに乗って、まだ暗い森を抜けている。そして、野原に出る頃には明るくなっている(3枚目の写真)。目指すは、2つの谷を分ける山。
  
  
  

山を越えるまでにはかなりの道のりがあり、野バラの谷の森に入った頃にはもう夜になっている。スコールパンは焚き火で食事をした後、背後の小さな洞穴に入って馬と一緒に寝る。朝になって、テンギルの兵士が焚き火の跡を見つけ、「奴は、もう来てたのか?」の相棒に言う。「待ってたんだろ」。「奴じゃなきゃ、誰かな?」。「あいつは、いつも遅いからな」。話し声でスコールパンの目が覚める。兵士たちは、再び火をおこし、焼ゴテを熱する。「奴にカトラの印をつけてやる時がきたな。これでシャンとするだろう」。そうしている間に、ようやく裏切り者が現れる。洞穴に隠れて見ていたスコールパンは、その顔を見て驚く。それは、あんなに陽気で優しかった金の雄鶏亭のヨッシだった(1枚目の写真)。ヨッシは、やってくると、「昨夜射落とした鳩に付いてました」と伝言の紙を渡す。それを読んだ兵士は、「レイヨンヤッタの奴、まだ逃げてやがる。百名の兵で日夜を問わず捜してるのに。何が何でも見つけんと」と口走る。ヨッシは、「あいつには、可愛がってる幼い弟がいます。罠として使えば、捕まえられるでしょう」と、さらに裏切る。「なぜ、もっと早く言わなかった?」。「その子のことが好きなので、傷付けたくなかったんです」。「よもや、合言葉を忘れたわけじゃあるまいな?」。「テンギル万歳、我らが解放者〔befriare〕」。「よし、忘れてないな」。「テンギルは、約束を忘れてないでしょうな?」。「チェリー谷の首領、だろ? だが、カトラの印を付けてもらう」。1人の兵士がヨッシを後ろから押さえ、もう1人が赤く熱した焼ゴテをヨッシの胸に押し当てる(2枚目の写真)〔焼印は、兵士の胸にある赤い3本の稲妻と同じ〕。「これで、お前も永遠に俺たちの仲間だ。そして、裏切り者だ」。ヨッシは逃げるように去って行く。兵士が引き揚げようと馬を引いて去りかけた時、運悪くフィヨーラがいななく。当然、すぐに兵士が洞穴を調べ、スコールパンも見つかってしまう(3枚目の写真)。「お前はどっちだ? チェリーの谷か野バラの谷か? どこに住んでる?」。
  
  
  

チェリーの谷と答えれば殺されるかもしれないので、スコールパンは、「野バラの谷」と答える。「山の中で何してた?」。「月の光を見てた」。「両親は誰だ?」。「おじいちゃんと暮らしてる」。「なんて名前だ?」。「名前? ただの『おじいちゃん』だよ」。「お前、バカか? どこで暮らしてる?」。「小さな白い家」。「家まで行って祖父に会わせろ」。やがて、村人が住む町(高い市壁で囲まれている)が見えてくる(1枚目の写真)。市門をくぐる時の合言葉は、先ほどヨッシが言ったのと同じ。番兵は、スコールパンを見て、「それは誰だ?」と訊く。「山で見つけたバカだ」。「お前は、夜、どうやって外に出た?」。この答えられない質問を「助けて」くれたのは、スコールパンを連れて来た兵士。「昨夜の番兵は誰だ?」と逆に質問したのだ。大事にならずにスコールパン一行は市壁内に入る。それでも、難題は続く。「先に行き、案内しろ」。スコールパンは、一度も来たことのない町を、訳も分からずに進んでいく。迷って足を止めるスコールパン。「祖父の家はどこだ? 遠いのか?」。「ううん、そんなには」。そして、町の中心へと入って行く(2枚目の写真、矢印はスコールパン)。木骨家屋が特徴のこの中世の街並みは、デンマーク第2の都市オーフス(Aarhus)の旧市街でロケされたもの。証拠は3枚目の写真(https://www.theguardian.com/travel/2017)。2枚目と全く同じ場所だと分かる。鍛冶屋の前で馬を止めたスコールパン。兵士が、顔を上げた男に、「この子が分かるか?」を訊くが、男は何も言わずに作業に戻る。知っていれば、何とか行ったはずなので、兵士は、「もし、すぐに祖父が見つからなかったら、カトラ洞窟に放り込んでやる」と警告する。町の外れに白い家が見えてくる。そこに「雪にように」白い鳩を放つ老人がいる。鳩を見たスコールパンは、その老人が味方に違いないと確信する。偶然、白い家でもある。スコールパンは馬を降り、老人に向かって走っていき、飛び付くと、「助けて、お願い、僕のおじいちゃんだと言って」と頼む(4枚目の写真)。老人は、「いったい何を考えとる! こんなに長い間、どこをほっつき回っとった? あの兵隊さんは何だ、何をしでかしたんだ?!」と叱る。その言葉に、祖父に違いないと思った兵士は、「次からは、孫をもっと監視するんだな。死罪に値する山の中にいたんだぞ」と厳重注意だけで済ませる。
  
  
  
  

兵士が去った後で、スコールパンは、「ホントのおじいちゃんだったらいいのに」と言い、老人は、「そうしたいんなら、わしは構わんぞ。わしはマティーヤスだ。お前は?」と尋ねる。「僕の名前は、秘密にしないといけないんだ。だから、スコールパンって呼んで」。暗くなり、マティーヤスがスコールパンを起こす。「おいで、いいものを見せてやろう、スコールパン・レイヨンヤッタ」。スコールパンはびっくりする。「僕、名前 教えてないよ」。「そうだとも。その名前は野バラの谷じゃ、大きな声で口にしちゃいけないからな」。マティーヤスは、大きな棚を全身で押すと1メートルほど動き、露になった床には地下への入口がある。「降りてごらん」(1枚目の写真)。スコールパンが降りると、そこには、兄が横になって寝ていた。「ヨナタン」と声をかける(2枚目の写真)。2人は、しっかりと抱き合う。「ここに来ちゃって、ダメだった?」。「いいや、私も寂しかった」(3枚目の写真)。
  
  
  

気持ちを切り替えたスコールパンは、兄に質問する。「叫んだでしょ。助けてくれって。なぜ叫んだの?」。「カトラ(火を吹く竜)を見たからだ。ひどいことをするのを見たんだ」。スコールパンは、重大な情報を伝える。「ヨナタン、誰が裏切り者か分かったよ。ヨッシだ」(1枚目の写真)。さっそく、兄とスコールパンは、その重大情報を託した鳩を放つ。翌日、テンギルが町へやってきて、住民全員が広場に集められる(2枚目の写真、矢印がテンギル)。テンギルの代わりに布告者が言ったことは〔威張っているので、自分では何も言わない〕、①テンギル様は野バラの谷の住民に失望している。レイヨンヤッタが未だに見つからないからで、理由は谷の住民が匿っているから。②テンギル様は谷の住民を厳罰に処する方針だが、お慈悲により猶予し、レイヨンヤッタを捕まえた者には褒美として20頭の馬を与える。③働ける男を全員徴集する、の3点。例外は許されないので、スコールパンもマティーヤスと一緒に聞いている(3枚目の写真)。布告者が②を述べた時に、「私がそやつを見つけてみせます」と発言した男がいたが、それは、髭を付けて変装したヨナタン。それまで、ヨナタンがいることに気付いていなかったマティーヤスは、その無謀さに呆れる。③の際には、中高年の男性まで引っ張っていかれたが、「圧制者め、いつか貴様も死ぬぞ!」と叫んでツバを吐いた勇気ある1人は、その場で斬首された。
  
  
  

何日後かは分からないが、夜になって、スコールパンが床の扉を開けて地下に降りる。中に入ると、ちょうど兄が、掘っているトンネルから這い出してきたところだった(1枚目の写真)〔兄は、掘った土を入れた木の容器を押しながら出てくるが、こんなことはあり得ない。写真のように体が入るだけのサイズの狭いトンネル内では、方向転換は不可能だ。トンネルに頭から先に入って行き、先端で掘って、お尻から先に出て来ないとおかしい〕。スコールパン:「トンネルの終点は?」。「市壁の向こう側」。「抜けられたら?」。「オルヴァールをカトラ洞窟から助け出す」。次のシーンでは、町中の家屋の一斉捜索が行われる。マティーヤスの家にも兵士が入ってきて、棚の中やベッドの上のものを床に投げ出して徹底的に調べる。その際、木の容器に土が付いているのが見つかり、棚が怪しまれそうになるが、マティーヤスが兵士の投げ出した綿束に暖炉の火を点け、注意を逸らす一コマもある。その後、厩舎に入って行った兵士は、馬を2頭とも没収する、今夜取りに来ると言って引き揚げる(反対すれば死刑)。愛馬フィヨーラが奪われると思ったスコールパンは泣いている(2枚目の写真)。ヨナタンは、「合言葉さえ分かってれば…」と呟く。スコールパン:「合言葉って?」。「市門から外に出るには、合言葉が必要なんだ」。「ヨッシが話してるの聞いたよ」。「覚えてるか?」。スコールパンは合言葉を教える。兄は、この情報に大喜び。さっそく、兵士に変装し〔どこで入手したのかは不明〕、白のグリムに乗り、黒のフィヨーラを引いてマティーヤスの家を出て行く(3枚目の写真)。
  
  
  

スコールパンは、ヨナタンが掘ったトンネルのところで、マティーヤスとお別れする。「さよならだな、坊主。おじいちゃんを忘れるんじゃないぞ」。「絶対、忘れないよ」。2人は抱き合う。「僕たち、オルヴァールを見つけられるかな?」。「うまくいくよう、祈ってるよ」(1枚目の写真)。トンネルに潜りながら、「ヨナタンが向こう側にいなかったら? もし、市門が出られなかったら?」と心配する。その時、ドアを強くノックする音が聞こえ、マティーヤスは、急いで床を閉じて棚を元に戻す。間一髪で兵士が入ってくる。そして、厩舎が空だと詰問する。マティーヤスは、兵士がもう持っていったとトボける。一方、スコールパンはトンネル内を進む。兄よりは体が小さいので、楽に這っていける(2枚目の写真)。穴の出口の覆いの草を押し出すと、そこには兄が待っていて、引っ張り上げてくれる(3枚目の写真)。穴の出口を元通りに隠すと、2人は市壁を離れる。
  
  
  

2人は夜じゅう馬を駆って森を抜け、カルマ滝のある渓谷に達する。野バラの谷なので、2人の周りには野バラが咲いている(1枚目の写真)。「食事をとって、眠ろう。明日は、ずっと歩かないといけない」。「グリムとフィヨーラは?」。「私たちが戻ってくるまで、ここにいれば安全だ」。そこからは、渓谷に架かる吊橋も見える。吊橋の対岸はテンギルの領地カルマンヨーカ。しかし、対岸は厳重に見張られているので、この吊橋を渡るわけにはいかない。夜になり、2人は焚き火の周りで暖をとる。スコールパン:「今、お兄ちゃんと一緒に かがり火のそばにいるよね。これをずっと待ってたんだ。『かがり火と お伽噺話の世界だ』って、言ったの覚えてる?」。「あの時は、ナンギヨーラのお伽噺が、こんなに陰うつだとは思わなかった」。「ずっと こんなだと思う?」。「いいや。最後の決戦が終わったら、美しいお伽噺話の世界に戻るだろう。だがな、最後の決戦は邪悪なものになるだろう。死者も出る。私は誰も殺したくない。戦いは、オルヴァールに率いてもらわないと」。その時、恐ろしい咆哮が夜のしじまを破る。そして、対岸の岩山の上に巨大な怪物の一端が見える。カトラだ。「ヨナタン、怖いよ」。「心配するな、ここには来ない」。次の日、歩きながら兄が説明する。カトラは、いにしえの雌の竜で、テンギルが角笛を吹くと、どんな命令にでも従うと。2人は、ごつごつした溶岩と苔が果てしなく広がる地を歩く(2枚目の写真)。この場所は、アイスランドのグルンダル・フィヨルズル(Grundarfjordur)。証拠は3枚目の写真(https://www.offset.com/search/grundarfjordur)。2人は遂にカトラ洞窟の近くに到達する(4枚目の写真)。
  
  
  
  

2人はカトラ洞窟の入口に近づくが、洞口には巨大な銅製の扉が付けられ、番兵が8人もいる。とても中には入れない。そこに使者が来て、①テンギル様の命令で今夜カトラが洞窟に連れて来られる。②オルヴァールには今夜が人生最後の食事になる、と告げる。ヨナタンは、スコールパンを、山の北側から入る別の入口へと連れて行く(1枚目の写真)。ヨナタンは、「この先、何が待ち受けているか分からない」からと、待っているよう命じるが、スコールパンは、「お兄ちゃんが行くなら、僕も行く」と言って、一緒に入って行く。中は真っ暗なので、ヨナタンが松明をかかげて進む。中に入るのは初めてなので、どう進むか分かっている訳ではない。しかし、運よく、洞窟の扉が開き、中に兵士が1人入ってくる。そこには、小さな檻が置いてあった。明かりが直接檻に当たるので、入口の扉からかなり近いことが分かる。兵士は持ってきた松明を檻の前の地面に刺すと、「テンギル様は、最後の時くらい松明とともにいさせてやれ、とおっしゃった。それに、こうしておけば、カトラの姿もよく見えるしな」と言い、洞窟を出て行く。2人はすぐに檻に向かい(2枚目の写真)、木で作られた檻の柱を削り、オルヴァールを助け出す。3人は、北の裏口から逃げ出す。ヨナタンは、持ってきた兵士の衣装をオルヴァールに渡す。3人は、兵士と2人の囚人というフリをして吊橋に向かう(3枚目の写真)。そして、合言葉を言い、チェリーの谷に隠した武器の在り処を教えるため2人の囚人を連行すると嘘をつく。オルヴァールが逃亡したという知らせがまだ届いていないので、簡単に通してもらえる。
  
  
  

3人が無事に吊橋を渡り、ヨナタンとスコールパンがグリムに、オルヴァールがフィヨーラに乗った頃、吊橋の封鎖命令を持った兵がやってくる。そして、直前に3人が出て行ったことを知ると、捜索隊が追尾する。グリムには2人が乗っているのでどうしても遅くなる。敵兵が追ってくるのに気付いたスコールパンは、「僕を、兵隊に見えないところで降ろしてよ。そしたら、オルヴァールに追いつくでしょ」と提案する(1枚目の写真)。「大丈夫か?」。「分からないけど、『土くれ』にはなりたくない」。ヨナタンはスコールパンを岩陰に残して去って行く。スコールパンが川原で時間を潰していると、馬のいななきが聞こえる。それは、ヨナタンではなくソフィーヤだった。「カール、そんな所で何してるの? ヨナタンはどこ?」。「オルヴァールをカトラ洞窟から助け出したんだ!」。ソフィーヤは無論のこと、一緒にいたヒューベルトも、最高の知らせだと喜ぶ。スコールパンが、「どこに行くの?」と尋ねると、ヨッシが市壁の弱点部を教えてくれるという返事。そして、そこにヨッシも現れる。スコールパンは、自分たちが送った伝書鳩がついていないのではと思い、「ビアンカはどうなったの?」と尋ねる(2枚目の写真)。「戻ってこなかった。射落とされたのね」。それを聞いたスコールパンは、「やっぱり。裏切り者はヨッシなんだ」と告げる。しかし、前にヒューベルトを裏切り者だと告発したので、信じてもらえない。そこで、ヨッシに向かって、「シャツを開けて、胸に何を付けられたか見せてみろよ」と迫る(3枚目の写真)。ヨッシはしらを切るが、怪しいと思ったソフィーヤは胸を開けてカトラの焼印を見つける。「この裏切り者! この谷でお前がやったことを恥じるがいい!」。ヨッシは、先ほどまでスコールパンがいた川原に逃げて行き、小舟に乗って逃げようとするが川に落ちる(その先には大きな滝がある)。
  
  
  

森の中の野営地。反乱軍の戦士たちが集まっている。中に、マティーヤスがいるので、野バラの谷の町の近くであろう〔トンネルから抜け出した?〕。オルヴァールはソフィーヤに、「彼らはいつ到着するんだろう? そんなに長く秘密にしておけない」と気を揉む。ソフィーヤは、「彼らはもう山を越えています。じきに着くでしょう」と答える。オルヴァール:「チェリーの谷の全員が必要です」。ヒューベルト:「戦える者は全員ここにいる」〔ここで疑問。最初にオルヴァールとソフィーヤが使った、「彼ら」とは誰か? 原作では、野バラの谷の者たちになっている。しかし、「どうやって?」と思いたくなる。先に、テンギルが直々に来た集会で、老人・女・子供以外は全員石切り場に徴集された。馬もすべて没収された。どうやって反乱軍を結集させたのだろう?〕。その時、旗を掲げた数十名の騎馬軍が到着する。ヒューベルトの言葉からして、これはチェリーの谷の軍勢ではない。野バラの谷の者たちのはずだ。オルヴァールも、それを見て、「戦いの時だ! 自由の日だ!」と興奮する。それを聞いたヨナタンは、「テンギル軍から谷を自由にする… 殺すのですか?」とオルヴァールに問う。「もちろん、当たり前だ」。「でも、私には人は殺せません」。「皆がそう思ったら、邪悪は永遠にのさばる」。スコールパンが反撃する。「みんながヨナタンみたいだったら、もともと邪悪なんてなかった」(1枚目の写真)。ソフィーヤは、「もう、あなたは十分に務めを果たしました」とヨナタンに戦闘に加わる必要はないと示唆する。しかし、オルヴァールは、「君の存在は大きい。『勇敢な心』が共にあるというだけで、心が奮い立つ」と参戦を求める。ヨナタンは、その場を離れ どうすべきか考える。一方、スコールパンとマティーヤスは再会を喜び合っている。「おじいちゃんと一緒だと嬉しいな」(2枚目の写真)。「わしも、スコールパンといると嬉しいよ」。次の場面は、野バラの谷のマティーヤスの家。そこに3人がいる〔トンネルから戻った?〕。マティーヤスは、「時間だ」と言うと、戦いの時を告げるための伝書鳩を庭から放つ。しかし、それを市壁上の衛兵に見られてしまい、槍を胸に受けて瀕死の重傷を負う。次のシーンでは、オルヴァールに率いられた反乱軍のうちの十数名が密かに町の中に侵入している〔一体どうやって中に入ったのか?〕。そして、市壁上の衛兵を全員殺し、内側から市門を開ける。外で待機していた反乱軍の騎馬隊が町の中に進軍し、町をテンギル兵から解放する。しかし、マティーヤスの家では、スコールパンとヨナタンが心配そうにマティーヤスを見守っている(3枚目の写真)。ヨナタンは、兄に「死んで欲しくないよ」と訴える。マティーヤスは、「じゃあ、そう努力しないとな」と呟く。ヨナタンはマティーヤスの手を取る。その時、オルヴァールが「ヨナタン」と何度も呼ぶ声が聞こえる。ヨナタンは、スコールパンにフィヨーラを渡すと、オルヴァールと一緒に決戦の場に向かう。
  
  
  

そして、決戦。市壁の外の野原に、テンギル軍が展開し(1枚目の写真)、一方の丘には反乱軍が並ぶ(2枚目の写真)。中心にはオルヴァールとヨナタンがいる。戦闘は反乱軍に有利に進み、テンギル軍が逃げ出す。オルヴァールが、敵の軍旗を折って「勝ったぞ!」と叫ぶ。しかし、兵士が消えた丘の彼方から角笛の音が響き渡る。テンギルの角笛に誘導されてカトラがやって来たのだ。カトラはテンギルの指示で、反乱軍に向かって火を吐く(3枚目の写真、矢印はテンギル)〔1977年の映画なので特撮の幼稚さは許容範囲〕。反乱軍で焼死した者は少ないが、勝ち目はないので逃げるしかない。
  
  
  

ヨナタンは、一人白馬グリムを駆ってテンギルに向かって行く。馬上槍試合(一騎討ち)のようだが、鎧をつけ 槍を持っているのはテンギルだけ。2人が交叉した時、ヨナタンはテンギルの槍を叩き落とす(1枚目の写真、矢印はテンギル、槍が逆向きになっている)。テンギルは、止まって角笛を吹こうとするが、ヨナタンはその角笛も奪う。そして自ら角笛を吹き、角笛の主に無条件で従うカトラに テンギルを焼き殺させる。そして、洞窟に戻るよう命じる。町の中には、戦闘で負傷した者たちが運び込まれている。スコールパンは、オルヴァールからマティーヤスが死んだことを知らされる。スコールパンは近くにいた兄に抱き付く。オルヴァールは、カトラがいる限り自由を祝うことはできないと言い、ヨナタンに、「角笛を寄こせ。洞窟に行ってカトラに鎖を付けてくる」と告げる。ヨナタンは、「私がやる。角笛がある限り、怖いものなどない」と言い切る(2枚目の写真)。ヨナタンとスコールパンは、カトラ洞窟に入って行く。衛兵は、全員、カトラによって殺されている。ヨナタンは洞内で角笛を吹くが、カトラの起こした振動で、角笛を「泡立つ泥沼」に落としてしまう。巨大な岩の端に立ち、「スコールパンの手を出すな、怪物め!」と叫ぶヨナタンに向かって、カトラが火を吐く。炎は、ヨナタンにもかかるが、彼は全力で巨岩を押す(3枚目の写真、矢印の向こうにカトラがいる)。幸いに巨岩は動き、カトラを「泡立つ泥沼」に沈める。
  
  
  

カトラを葬ったヨナタンは、スコールパンと吊橋を渡り、以前 焚き火のそばで一夜を過ごした池の端に辿り着く。ヨナタンは元気がなく、ぐったりしている。ヨナタン:「あってはならないお伽噺話もあるんだ。よく分かっただろ?」。「おじいちゃんには もう会えないんだ。マティーヤスはどこにいるの?」。「ナンギリーマだ」。「リンゴの谷の小さな農園に住んでるんだよね。今は摘果の時期だから、お手伝いに行かないと」(1枚目の写真)「梯子を上るのは無理だから、家で休んでればいい」(2枚目の写真)。兄が苦しそうな声を出す。「どうしたの、ヨナタン?」。「暗くなりかけた。焚き火を起こそう」。最後のシーン。辺りは真っ暗だ。「スコールパン、話しておくことがある」。「何なの?」。「私はカトラに焼かれた。直に体が麻痺するだろう。今は、足が動かない。次は手だ」。「休めば、治るんじゃない?」。「いいや、治らない。治るとすれば、ナンギリーマだけだ」。「ナンギリーマに行けば、良くなるの?」。「覚えてるか? 家が火事になった時、窓から飛んだだろ。私がお前を背負い、そのままナンギヨーラに行った。だから、もう一度飛ばないといけない。2人で、あそこの崖から」。「そうすれば、ナンギリーマに行けるの?」(3枚目の写真、スコールパンは崖を見ている)。「そうだ」。「じゃあ、一緒にナンギリーマに飛んで行こう」(4枚目の写真)「マティーヤスも びっくりするよ。グリムとフィヨーラは?」。「2頭ともナンギリーマで待ってる。カトラに焼かれて死んだんだ」。「ヨナタン、僕が背負うよ。前に僕を背負ってくれたように。動けるのは僕だけだから」。「できるのか?」。「できるさ。でなきゃ、僕はただの『土くれ』だ」。「怖くないのか?」。「怖いよ。でも やってみせる。今やろう。そうすれば、怖がらなくてすむ」。焚き火の中にひと際明るい部分が現れる。「光が見えるよ、ヨナタン! ナンギリーマだ!」。最後に映るのは、現実の世界での白黒映像。墓碑銘には、「復活の日まで安らかに眠れ」と刻まれている。
  
  
  
  

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